TeaRoomの共創事業部の主力メンバー、そしてCEO室長として働く高木ひかるさん。
「創業当時からTeaRoomが言っていることは変わっていません。でも、社会からずっと強く、求められるようになってきた手応えを感じます」
大学生だった2018年のインターンから、そのまま新卒で入社した高木さんは、TeaRoomの変遷をよく知る古参のメンバーの一人です。
多様な接点から染み出す思想で、社会の色合いが変わる──TeaRoomらしい社会のつくり方を聞きました。
急成長に揉まれ、支えて
──TeaRoomにおける仕事内容やミッションを教えてください。
共創事業部にて、クライアント企業と、中長期で新しい価値を社会に生み出すようなプロジェクトに取り組んでいます。共創事業部の特徴でもありますが、TeaRoomの中でも、野心的な企画に携わることが多いです。
また、創業期のインターンからの新卒入社と社歴が長く、代表岩本さんの思想には間近で触れ続けてきたので、CEO室長も兼務しています。
CEO室長としては、文化事業部、Tea事業部という他の部署にも関わり、CEO岩本直下案件やPR業務など、幅広く業務に携わっています。
シリコンバレーの創業期のスタートアップには、「落ちそうなボールをなんでも拾う」「あらゆるギャップを埋める」ことで、事業の急成長を支える”Chief of Staff”というポジションがあるそうですが、それに近い役割だと、社内では言われています。
──共創事業部で関わったものには、どのようなプロジェクトがありますか。
たとえば、大手デベロッパーの東京建物、ものづくりクリエイター集団secca 、TeaRoomの3社による、お茶を通じたオフィスワーカーのウェルビーイング向上プロジェクトでしょうか。2024年9月に、東京建物が参画する「東京駅前八重洲再開発プロジェクト」から導入が始まりました。「オフィスで、美味しいお茶を急須で淹れて、みんなで飲む」という習慣づくりへの挑戦です。
目的は、お茶という飲料をオフィスにただ導入するのではなく、オフィスでの新しい働き方をつくるために、お茶を活かすことにあります。お茶を通して、オフィスでのコミュニケーションの在り方そのものを変えていく、活き活きしたオフィスワークの新しいモデルを東京八重洲からつくろう、という試みです。
「忙しいオフィスワーカーがお茶を飲んでもらえるには、そこでどんな価値を感じてもらうか?」いうプロダクトや体験の設計が鍵になります。「オフィスビル開発」という産業と「急須のお茶をみんなで飲み、団欒の時間を過ごす」という日本にあった文化をつないで、新しい文化創造を目指すTeaRoomらしいプロジェクトだと思います。
「人は人の信用力を借りて、信用されるようになるんだよ」
──大学時代のインターンからの新卒で入社された高木さん。どんな大学生で、どのようにTeaRoomと出会ったのでしょうか。
TeaRoomに出会ったのは2018年11月。私はまだ大学1年生でした。
そもそも私には、大学入学時から「何か挑戦しないと!」という強い焦燥感があって、学外の学生団体に自分で問い合わせて入ったり、IT系、マーケティング系などの企業でインターンとして働くような大学生でした。お茶・茶道との接点もあり、静岡出身ではないのですが、父が転勤族だったので、高校は静岡の韮山高校。そこで、1年生から部活で茶道を始めました。
大学時代に、ベトナム企業に直談判をして、自分で企画を組んでインターンに行き、現地で茶道や日本文化のレッスンをした経験もありますが、私が「茶道が大好きな人間」というわけでは全くなく、大学生の自分が他の人よりできること、求めてもらえることが茶道だったんです。
TeaRoomに出会ったのは、TeaRoomが曹洞宗大本山總持寺で開催した茶会でした。Facebookの投稿を通じて知り、自分からメッセージを送って、参加しました。当時の私は「茶道が少しできる、ただの大学生」で、TeaRoomへの接触も「大学時代に、社会への扉をこちらからたくさん開けていくうちの一つ」というくらいの感覚。その後、TeaRoomにどっぷり浸かり、新卒入社までするとは思ってもいませんでした。
──出会った当時に感じた魅力は、何だったんでしょうか。
代表の岩本さんに関しては、当時から「お茶の持っている楽しさや嬉しさ」を周囲に伝えてくれる人で、何か新しいことをする時には、考えながら、それを空想から現実に移すための行動にすぐに移す人で。そのあたりは、今と全く変わっていません。
私自身、学生時代に様々なコミュニティにいたこともあり、圧倒的に頭が良い人も、夢を熱く語る人も、時間なんて気にせず死に物狂いで突っ走れる人も、クリエイティブなものを世に生み出せる人にも、出会っていました。
その中でも岩本さんが特別輝いて見えたのは、口にしてから走り出すスピードが圧倒的に速く、それを叶えようとする力強さと、その裏にある人間らしさがあったからだと思います。
──インターンでは、どんな業務を行っていたのでしょうか。
出会った1ヶ月後から、当時は事業承継前でしたが茶畑や工場がある静岡県本山地域の出張に同行。茶会企画・運営、クライアントへのお茶導入や卸とその企画という「お茶」「茶道」に直接関わるものから、新規事業の企画設計やCS業務などの立ち上げ業務、メディア対応や自社発信コンテンツ制作のPR業務まで、業務経験を幅広く担当していました。会社の急成長のために必要なことをなんでもこなす、という今の業務スタイルは、CEO岩本さん、CFO近藤さんの直下で働き続けたインターン時代に鍛えてもらったと思っています。
──TeaRoomへ新卒入社を決めた理由は、何でしたか。
実は、TeaRoomには新卒では入社しないと考えていて、周囲にも伝えていましたし、自分でもそう思っていました。そのため、大学4年生時からTeaRoomから内定は頂いている形で、就職活動をしました。社会人の方との繋がりも多かったため、大学の教授、学生団体時代の先輩、仕事を通じて出会った方々のような、TeaRoom以外の外の人に話をしにいく機会をたくさんつくりました。皆さんに口を揃えて言われたのは「良い経験をしてきたんだね、きっとその会社が好きなんだね」ということと「実力をつけてから、また戻ることもできるんだよ」の二つ。当然ですが、誰も明快な答えはくれず、自分で決めるしかありませんでした。
なので、2つのことを天秤にかけました。ひとつは、自分が創業から信じてついてきた岩本さん、近藤さんの描いている未来、これまで自分がTeaRoomで積み上げてきた実績。もうひとつは、新卒という最初で最後の期間を大企業で過ごすことで得られる「社会での信用力」。最終的には、ここからTeaRoomが大きく伸びていく未来を信じる、という自分の直感に賭けて、入社を決意。今考えれば、正しい選択であったと思っています。
就活をキッパリ辞めて、岩本さんに「TeaRoomに入社したい」と伝えた時に「人は人の信用力を借りて、信用されるようになるんだよ」と言われたことを、今でよく覚えています。
茶道が少しできるただの大学生だった私も、岩本さんやTeaRoomの信用力を借り、色々な仕事を任せてもらったからこそ、成長できたと強く感じました。もっと活躍して、その恩返しをしたい、と思って入社しました。
TeaRoomの思想に触れた人が変わり、社会の色合いが変わってきた
──創業期から関わり、社歴の長い高木さんからみて、TeaRoomはどう変化してきましたか。
私がTeaRoomと出会った当時から今まで、岩本さんやTeaRoomの言っていることの核となる信念は全く変わっていないと感じています。一番の変化は、その発言が徐々に社会から共感されたり、認めていただけるようになった事ではないでしょうか。
最近、インバウンドをテーマにしたサミットの登壇依頼を岩本さんにいただきましたが、そのテーマは「どうやって、文化とビジネスの両立をさせるか」。少なくとも、TeaRoom創業の2018年に、そういう切り口の企画はなかったと思います。2023年にも、Forbes JAPANで「カルチャープレナー(文化起業家)」という特集が組まれ岩本さんが表紙を飾ったり、「文化と産業の対立をなくす」をはじめ、岩本さんが創業期からずっと言い続けてきた思想が社会に染み出していき、社会が変化していることを実感します。それと同時に、ビジョンを実現するための心強い仲間が増えてきていると実感できるのが、とても嬉しいです。
たとえば、ICCサミットで、TeaRoomで2024年9月時点で、既に5度の茶会を主催させていただいてきましたが、日本有数のビジネスサミットからのお声がけで、サミットと同時に茶会が開催されている、という状況も当たり前ではなく、TeaRoomの思想に触れていただいたことによる人や組織の変化の結果だと思っています。
その茶会に参加した経営陣の方の中には、お茶のお稽古をはじめた方々もいます。すると、その会社の会社や事業に、今までになかった新たな思想が染み込んでいくはずです。
私はTeaRoomを「お茶を、お茶として活用しない会社」だと思っています。「目の前の人を大切にするコミュニケーションへ変える」「短期ではなく、中長期でものを考えるようになる」など、お茶や茶の湯の根底にある「有用な思想の媒介」としてのお茶を扱えるのが、TeaRoomの特徴です。冒頭でお話した東京建物とseccaとのプロジェクトもそうですが、TeaRoomが起点となって、お茶が入っていなかったところに、お茶が入り始めていますし、お茶が入りえなかったところにも、お茶が入り始めている。そんな社会の変化を強く実感しています。その範囲は今後も広がっていくと思いますし、その拡げていく役割を担うのが、私のいる共創事業部で扱うプロジェクトの特徴でもあります。
──どんな人がTeaRoomに向いていると思いますか。
創業者の岩本さんの思想、日本や世界中を飛び回って得た経験が色濃く事業に反映される会社なので、岩本さんと同じ視座を持って働ける人が向いてると思います。
どういうことかといえば、たとえば、何をやるにしても、事業の主語や対象が、事業部や会社という単位ではなく、地域や国、世界となるのがTeaRoomです。自社だけが儲かるのではなく、常に公益を考えて、企画を立てたり、多様なステイクホルダーとの対話をしようとする姿勢が求められます。そうした仕事をしてみたいと心から思える人と、ぜひ一緒に働きたいです。
対立のない優しい社会を、みてみたい
──最後に、高木さんがTeaRoomで果たしたい目標を教えてください。
TeaRoomは、社会を変えることのできる会社だと思っています。それも、表面的な事だけではなく、本質的に必要なことをできる、と思っています。
TeaRoomが様々な業界、地域、人と接点を持ち、一緒に何を創り上げた結果、それに触れた人が変わる、企業が変わることで、徐々に思想が染み出していき、社会の色合いが変わっていく。それが、TeaRoomらしい社会のつくり方かな、と今は考えています。
そうした事業の進め方は、分かりやすく目の前の社会課題を変えるビジネスでもありませんし、時間のかかることでもあると思っています。でも、その先にある「対立のない優しい社会」が実現した世界を、私は見てみたいと思っています。
裏千家15代家元・千玄室さんのお言葉で「一盌からピースフルネスを」とありますが、私はこの言葉に高校1年生の時に出会いました。当時は正直あまり深く理解ができなかったのですが、今となっては、その方の肩書きや国籍、状態に問わず、目の前の方に向き合って一服のお茶を点てて差し上げられる、そんな状況がいかに大切かと思います。
それは物理的にお茶を点てるとか、それが上手い下手やできるできない、そういったことではなく、その心を持って日々過ごすことができるか、という心の問題だと理解しています。
私自身、生きている中で、心の陰りや、憂いや焦りも、これでもかという程湧き出てきますが、そんな時に、自分と、目の前の人と、そして想像の少し先にいる人に、批判ではなく、理解の気持ちを向けられるか、そういった心を持つことがお茶らしさだと思っているので、TeaRoomの事業を通じて、そうした思想に溢れ、対立のない優しい社会になれば良い、と思っています。